秋月

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いつまでも記憶に残っている景色がある。

何も特別な景色ではない。いわゆる絶景だとか、なにかをやりとげたからこそ見える景色、なんてものでもない。
ただ、君がいて、私がいて、二人笑っている。そんな、何でもない光景をいつまでも忘れられずにいる。



君が私の前からいなくなってどれ程の月日が経っただろうか。いるはずもない君を探していろんな場所を巡った。天を突く山を、蜃気楼の街を、海を走る列車だって、鏡のような国にだって探しにいった。
……あるいは、これは君を探す旅ではなく、いつか君と語らうための旅だったのかもしれない。
目覚める度に私の灯火が細く、微かなものになって行くのを感じては、あと少し、あと一里だけでも、と足を進めてきたが流石に限界を迎えたらしい。

君と出会ったこの地で眠りにつけることは喜ばしい。
願わくばまた、君に出会えますように。

5/9/2023, 11:08:39 PM