自転車に乗って。
坂の多い町に生まれた。
極端な所だと、数キロに渡って下り坂の場所もある
そこから見下ろす海と橋は、中々に良い眺めだ。
夏休み、友達と旅をする事にした、
とは言っても、学生らしく自転車で。
同じ県内の島に、長い橋を渡って行く。
正直、楽しい理由の見出だせない旅だと思った。
日が出るのが早い季節、それでもまだ少し暗い時間
暑くなる前に、目的地に着くために出発した。
橋までくれば風はひんやりとしている。
寧ろ少し肌寒いぐらいだ、それをかき消すように
スピードを上げていく。
海と森と友達と、何となく、
それさえあれば充分だと思えるぐらい
気分が良かった。
海水浴場に着き、水着になって
ひとしきりはしゃいだあと、
座りながら皆で将来の話をした。
大人になってもまた来たいよな、
その時は、車かな?
俺の親父の軽トラで来るか、
乗れへんやないか、
荷台があるやろ、
捕まるぞ。
帰り道、
本当に、こんな日々が続けば良いのになって
思った。
自転車に乗って、
けれども何処にも行きたくない、
不思議な気分になった夏休み。
8/14/2024, 12:29:09 PM