シオン

Open App

(現パロ)
 昼休みの後、五限目の授業は古典でおじいちゃん先生の単調な声が教室に響いていた。
 特に誰かが当てられるわけでもなく、グループディスカッションがある訳でもないそんな授業は、どんな時間であっても基本的に眠気を誘うものでしかないのに、昼休みの後なのだからいつもより数倍の威力を持って僕の眠気を誘うのである。
 今の時刻は授業開始から十分を過ぎたところで、後四十分は残っているというのに、もうすでに上のまぶたと下のまぶたがくっつきそうであった。
 この授業の先生というのが厄介で、寝ている生徒は特に起こしもせずに減点してくるタイプだった。
 そんなわけでどうしても眠るわけにはいかず、隣の席のメゾに目を向ければ、目が合った彼女は少し笑ってからメモを寄越してきた。
『眠そうだね。なんかする?』
『そうだな。絵しりとりでもするかい?』
『絵、得意じゃないから』
『じゃあ最近あったことでも書いてくれよ』
『仕方ないな〜』
 声ではなく文字で会話をするというのは新鮮で、そしてめちゃくちゃ楽しかった。
 会話に夢中になっていたとき、授業終わりの時を告げるチャイムの音が聞こえた。
 号令がかかり、慌てて立ち上がって礼をする。座り直す時に彼女がそっと囁いた。
「楽しかったから、またやろうね」
 柔らかく微笑んで教室から出ていく彼女を見つめながら僕は大きくため息をついた。

9/6/2024, 12:58:12 PM