「二人ぼっち」
荒廃した平野を二人の旅人が歩いている。
一人は気ままな詩人で、もう一人は寡黙な音楽家である。聞き役は枯れ木と獰猛な野鳥だけ。砂煙の道を二人の音色が満たしていく。
ひたすら赤茶色な景色の先に詩人が青色をみつけた。海である。潮の香りの空気を世にも美しい歌が震わせている。海の上空には鮮やかな摩天楼が浮かんでいた。
我慢できないというように、音楽家がギターを奏でる。だが、歌は止まり摩天楼も失せた。
所詮は幻。二人はまた、二人だけの音楽を響かせ始めた。
(終)
3/21/2024, 11:49:40 AM