愛し合う二人を、好きなだけ

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小説
迅嵐



「今、何て?」

追い風が俺の背を少しだけ押す。目の前には、顔をリンゴのように真っ赤に染めた迅。右手で顔を覆っているが、隠しきれていない羞恥に染まった瞳をこちらに向けている。

「…今日くらい聞き逃せよ」

彼の口からは風でかき消されてしまいそうな程小さな声が漏れ出た。
未だに追い風が俺の背中を押している。
今だ、行けと。

「…いいや、聞き逃さない。答え合わせをさせてくれ」

俺は迅の目の前に立つ。友人の距離を超えて、けれども恋人の距離よりも離れて。

「お前…俺の事、好きなのか?」

一際大きな風が吹く。答えは俺にしか聞こえなかった。

1/7/2025, 1:10:21 PM