赤いヘッドホン

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突然不安になることがある。
何かやらかした覚えがあるわけではない。
黒歴史を思い出したわけでもない。
悪い未来を察知できるほど勘が鋭いわけでもない。
家を出て鍵をかけたそばから鍵をかけたか心配になる、あの現象とは少し違う。
何に対しての不安なのか、はっきりしないのだ。

その為、答えはいつも分からずじまいだ。
自分は何をそんなに心配しているんだろう。
それはそんなに不安になる必要があることなのか。
そんな自問自答も意味がない。
なぜなら答えが分からないから。
模範解答も採点基準もない記述問題の丸付けをするかのごとく、きちんとした答えを出すことが不可能なのだ。
少なくとも、自分には無理なのだ。

教室で一人頭を悩ませていたところ、友人にどうしたの、と声をかけられた為、事情を説明した。
すると、友人は
「……なら、安心していいんじゃないの?」と言った。
「だって、不安だからその原因を見つけたくて、でも出来なくて、だから安心したいと思って安心できる根拠を探して___それって、手は尽くした、ってことでしょ?要は受験とか定期テストと同じ。やりきったんだったら、ひとまず安心して結果を待てばいいと思う。」

……なるほど。
自分はなぜあんなに難しく考えていたのだろう。
もっと単純な話だったんだ。

自分が感じる不安について、人に相談したことがあった。
ある人曰く、こういうことは大抵取り越し苦労で終わると相場が決まっている、らしい。
別のある人曰く、あるある、だそうだ。

あの時は異論しか無かった。
もう少し真面目に話を聞いてくれよ、なんて思っていた。
しかし今、この二人の返答の意味を完全に理解できたような気がした。

友人に礼を言った。
友人はいえいえ、と言った後、今日の小テスト、再テにならないように頑張ろーねー、と言うとどこかに行ってしまった。
え、そんなのあったっけ今日。

…ヤツは自分に新たな不安の種を蒔いて去っていった。

1/25/2023, 4:11:43 PM