秋恋
16歳の時、抗えないまま受け入れた関係があった
たった1ヶ月で散ったけれど、強烈に記憶に残っている
ばいばい、と泣きながら別れを告げてきたのは
16歳歳上の、既婚者の同性だった。
会ったこともない、声しか知らない
けれど、別れた人に私がそっくりだったと
私を通して、その人を見てしまっていたと
苦しそうに教えてくれた
いかに傷つけてしまったか。
風が涼しくなってくると、息が浅くなる日がある
10月2日。あの人の誕生日。
お別れを言うのが、誕生日だなんてあんまりだから
10月3日にした。
素直なあなたは私の、身勝手な弱さを
丁寧に聞いて、絞り出すような了承を発した。
感謝と謝罪と、理屈と道理では押し殺せなかった感情が
人間らしさに塗れていた。
金木犀が香る昼下がり、幸せそうに話すあの人は
私に許され、社会的には罪を犯していた。
忘れられない秋の過ち。
過ちと言い放つには
お互いが弱かった。
心の隙間の形が
偶然にも合わさってしまった。
ぐずぐずになった声の「ばいばい」と
電話の切れた音が
弱さとは何かを学ばせた。
9/21/2024, 5:05:09 PM