憧れ

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「君が25歳になったら必ず迎えに行くから」
私の初恋で、夢追い人の彼がさよならを言う前に置いていった言葉だ。

20歳の私は、5年という歳月を永遠と言われるよりも長く感じていた。

そんな気持ちとは裏腹にあっけなく日々はすぎ、今日で26回目の誕生日を迎えた。

私は恋人と、夜景の見える綺麗なレストランで幸せなひとときを過ごしている。

別れた直後は味のしなかったケーキも、今では甘ったるいほど鮮明だ。

彼が残したキザな約束は、嘘に変わった。

23歳で次の恋を選んだ私に怒る権利はない。
それでも、心のどこかで彼がくるのを待っていた。

付き合っていた当時、いつでも手を引いてくれていた彼は、ついに私の足を引っ張ることもやめてしまった。

せっかくのデートで他の人のことを考えてしまっていた私の側にいつのまにか来ていた恋人は、跪いてポケットから何かを取り出した。

「僕と結婚してください」

片方の目から何かが伝うのを感じた。

プロポーズが嬉しいからなのか、約束を永遠に失うことが悲しいからなのか、自分でもよく分からなかった。

それでもたしかに初恋が終わる音がして、私は恋人の手を取った。

お題「さよならを言う前に」

8/21/2024, 9:57:13 AM