南葉ろく

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 見慣れた街並みだ。あなたにとっては、きっと。毎日、毎日、繰り返し歩いたアスファルトの道の、少し歩きづらい場所だとか、踵を鳴らすと小気味良い音がなる場所だとか。知っているから何か得をするというわけでもない、誰かにとってはどうだっていいハナシ。
 目に入るものに、意味のないものに。ひとつでいい。なにか意味をもたせることが、楽しくて。その意味にも、とくべつな意味はないけれど。
 本当は、誰にとっても意味はないんだ。あなたは知っている。毎日歩いたアスファルトの道の上も、曲がり角を曲がれば辿り着く、これまた毎日通ったコンビニだって。視線をひとつ逸らせば。ほら、もう。
 嫌というほど見慣れた街並みだ。私にとっては、きっと。
 喉はどうにもひりついてしまっていて。言うべき言葉も意味を喪ってしまったようだ。



テーマ「さよならを言う前に」

8/20/2024, 10:21:00 AM