旅舟

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『元気かな』



 俺は娘を虐待したという罪を着せられて、おまえを、娘を奪われた。
 離れ離れに暮らして一年も過ぎた。
 会いたい。

 俺は赤ちゃんの頃から溺愛した。
 この子のためなら何でもすると思った。
 例えそれが殺人でも。


 仕事から帰ったら思いきり抱きしめて、匂いを嗅ぎまくって嫌がるのを押さえつけてキスをしまくった。
 おまえは母親に捨てられた子だったが、俺の愛をいっぱい受けけ止めて、ヤンチャでわ
がままな女に成長した。

 油断すると、他の男に色目を使うようになり、俺はほとんど家に閉じ込めるようになった。娘を奪われたくなかった。
 そして、娘を監視するため、俺も仕事を辞めて、家に閉じこもった。
 お金も無いから買い物にも行けず、食べるものも無くなって、娘と俺はどんどん痩せていった。

 ある日、連絡が繋がらないと母の妹である叔母さんが家に来た。
 俺は妻と離婚した寂しさの穴を、娘で埋めようとしていると言われた。 
 それは娘が可哀想で、これは虐待だとも言われた。
 このまま娘を俺のそばに置いておくのは俺にも良くないと言われ、娘は叔母さんが育てると言って奪って行った。
 あんなに愛していたのに、虐待の罪を着せられ、娘を奪われ、俺は半年ぐらい泣き続けた。
 
 でも、きちんと働いて規則正しい生活が出来るようになったら、娘を返してもいいと言われて、バイトをやってみる決意をした。

 そして、娘を奪われてから1年後。
 娘と再会できることになった。

 数カ月、様子をみて、大丈夫だと思ったら、帰してもいいとまで言われた。

 ああ、おまえは、元気かな。
 そう思っただけで涙が溢れた。

 
 
 電車を乗り継いで、叔母の家まで行った、
 玄関のドアホンを鳴らした。
 おまえの喜ぶ声が聞こえた気がした。

 玄関に灯りがつく。
 カギを外す音がして、扉がゆっくりと開いた。
 僅かな隙間から、おまえが飛び出して来た。
 
 俺は娘を抱きしめた。
 娘も暴れるように喜んでくれた。
 思わず娘とキスをした。
 娘は激しく舌を使う。
 俺が恥ずかしくなるほどに。

「フローレンス・マーガレット・ジュリエット・アントワネット・マリリン‼️」
 久しぶりに娘の本名を叫んだ。
 娘の興奮が最高潮に達して、オシッコを漏らしていた。

 いい歳をして、まだ子供のようである。

 娘は、マルチーズ犬のまだ4才。

 もう少し、私のそばで、一緒に遊んでほしい。

 おまえが望むなら、男の子も紹介するけれど、血統書付きのイケメンの金持ち限定で探してやる。

 今度の再会は3ヶ月後に決まった。
 きっとその時は、おまえを連れて家に帰る。

 それからの3ヶ月の間、毎日おまえで頭はいっぱいだった。
「元気かな」
 そうつぶやくと、おまえの顔を思い出す。

 男も用意する?
 イヤだなぁ。
 この年でおじいちゃんか?

 俺はいつまで、元気かな。
 おまえのひ孫のひ孫まで、ずっと元気で暮らせるように、きちんと就職も考えようかな。

 さあ、がんがるぞー‼️




 

4/10/2025, 9:34:25 AM