善次

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ミッドナイト

 ミッドナイト・ブルー――夜にだけ現れる青。
 暗くて深い色のなかに街の灯りが輝く……。
 人の営みを飲み込んでうつろい、眠りを誘う。
 微睡みを友とし、静謐と喧騒とをまとめて紫煙で彩った、深夜……ミッドナイト……。
 人々が夢の中で禍福を噛みしめる時間にだけ現れるそれを、蜜のように、毒のように味わう。

 あなたの手を照らすブルーライト。その源。
 人が社会の一員として、集団として、組織として、個人として、つながるために鎖のごとく拘束するスマートフォン。
 探してみるといい。
 あなたが滑らかなディスプレイを撫でてやれば、それは幻夢のように視界を彩る――

 おにぎり……やきそば……ラーメン……焼き鳥……あるいはビール(BEER)。

 深夜に現れる妖精。肉体が求めて止まぬ豊かな味わい……夜食――不健康――成人病を招くあなたの敵。あなたの神。あなたは止められない。

 ハンバーガー……うどん……牛丼……スシ……そしてウィスキー(WHISKEY)。

 いのちを選ぶ?
 欲を満たす?
 深夜の問い――答えは出ない/迷いはない――あなたの運命。
 コンビニへ歩むあなたが握るのはSuica……それとも飲食店へICOCA?
 ミッドナイト・ブルーをはらんだ街があなたを誘惑する。

 血糖値……体脂肪率……BMI……虫歯……だけど、幸福(HAPPINESS)。

 ミッドナイト、夜にだけ現れる。
 ミッドナイト――夜食とあなたの華麗なるワルツ。
 誰にも止められない。

1/26/2023, 1:33:44 PM