【光輝け、暗闇で】
この世は残酷だ。
少しでも“普通”と異なるだけで、異端者として扱われる。
自ら好んで“そう”なった訳ではないが、そんなことは周囲の人間にとっては問題ではない。
僕はただ、認めて欲しかっただけなのに。
何がいけなかったのだろう。
承認を得たいと思ってしまったことが間違っていたのだろうか。
“普通”と異なる僕は、皆んなと“同じ”であることさえも許されないのだろうか。
どこに行っても、僕は独りだった。
太陽が燦々と照りつけていても、僕の世界は真っ暗だった。
希望もない闇の世界で、ずっと独りで生きてきた。
これが僕の運命なのだと、諦めきっていた。
ある日、僕の世界に一筋の光が射し込んだ。
歌声が綺麗な子と出会ったのだ。
あの子の歌は、技術もまだ習得しきれていない上に、音程もやや不安定だった。だがそれ以上に、澄んだ音色で、とても美しかった。
気がつくと、僕はその子に声をかけていた。
思い返すと、随分と早まったマネをしたなと自分でも思う。
しかし、それは些細なことに過ぎなかった。
あの子は僕に応え、僕を受け入れてくれたのだ。
いつしかあの子は、僕にとっての救済になった。
あの子が歌えば、僕は救われるのだ。
入学式が終わり、部活動の見学が始まった。
僕が入部を決めている部活動の練習棟に行くと、あの子がいた。何という偶然だろう。まさか、同じ学校だったとは。
入部の決意をより強固にして、僕はまた、あの子に声をかける。
あの子の周りにいた女生徒たちは、僕を見た途端、顔色を変える。やはり、ここでも変わらないか。
そう思った刹那、あの子がにっこりと笑いかける。
やっぱり、この子は他の連中とは違う、特別だ。
真っ暗闇の世界の中で、あの子は光輝いていた。
5/15/2025, 3:02:12 PM