胡星 (小説書き)

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テーマ『新しい地図』


目の前には暗闇が広がっていた。もはや目を開けているのか、閉じているのかすら分からない。

しばらくすると、遠くでキラキラと光るものがあることに気づいた。

僕はその光を目指して歩き始める。周りが暗闇なので進んでいるのかが分かりづらいけれど、確実にその光は近づいている。

「これは……」

感覚だと数時間。それくらい歩いたとき、ついにその光へ辿り着いた。

その光の正体は謎の宝箱。僕はゆっくりとその宝箱の蓋を開ける。すると──

「地図?」

中に入っていたもの。それはボロボロになった地図だった。しかもただの地図ではなく、所々不思議なことが書かれている。


──────────────────────

ゴール
「死」

無数の道
( 得たスキルによって地図が変化する)

スタート
「小人」

──────────────────────


「スタートは小人。ゴールは……死?」

どうして小人から始まって死で終わるのだろう。なんとも不気味で、しかも理不尽。こんな地図があったところで僕はその道を進みたいとは思わない。

そして気になるのはもう1つ。

「得たスキルによって地図が変化……」

普通地図というは細かく道のりが書いてある。でもこれはスタート、無数の道、ゴールの3つしか書かれていない。ざっくりしすぎている。

変化するってことは、人それぞれってことか……。


「──っ!!」


一瞬何かを思い出しそうになった。

僕は、何か知っている。この地図について知っている。

「ゴールには死が待っている……そう分かっているのに、僕は歩き続けていた……」

なんで?

「そこに誰かの顔があった、から」

思い出せそうで思い出せない。誰だ。頭の中に浮かんでいるこの顔は誰の顔なんだ。

その"誰か"を思い出そうと頭を抱えていると、その人の声が聞こえてくる。


『m……w……s……m……s……t』

『p……p』


なんて言っているんだ。聞こえそうで聞こえない。分かりそうで分からない。

君たちは一体──


『め……さ……し……て』

『……ぱ』


僕はこの時、すべてを思い出した。


『目を覚ましてっ!!』

『パパぁ!!』

僕は今、地図に書いてあった無数の道を歩んでいたんだ。

なんだか、頭が痛くなってきた。ズキズキする。

少しずつ"その世界"の感覚が戻ってくる。

『お願いっ!!』

頬に何かが落ちた感覚。

手がギュッと掴まれる感覚。

安心する声。

良かった。宝箱に入っていたものが新しい地図じゃなくて、ボロボロになった"僕の地図"で本当に良かった。

大丈夫。心配かけてごめん。今行くから。

そう思うと同時に世界は明るくなる──


「あい、してる。それと……」



【ただいま】

4/6/2025, 1:24:49 PM