うみ

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 ──いらっしゃい、不思議なお客さん。


 君は、星のかけらが落ちてきた日のことを覚えているだろうか。

 そろそろベットに入ろうと話していたときだった。

 突然家の前が眩しく光って、慌てて様子を見てみたら、燦然と輝く不思議なかけらが落ちていたんだ。
 君の手に収まるくらいで、案外小さかった。

 オパールかクォーツか、それともダイアモンドか。

 二人で近づいてよく見てみると、それはどうやら、いのちを持っているようだった。

 僕たちが触れると、ちかちかと光って何かを訴えようとしてきて。
 どうにもならないから明日の朝まで置いておこうかと相談していれば、近所迷惑になるほどの激しい光を放つ。

 とりあえず家の中に入れようと決めて、布で包んでストーブのきいたリビングへ運んだ。ああ、そうだ、あの日はとても寒かった。外に出していた如雨露の水が凍ってしまうくらいだったね。

 君が膝の上に乗せて布で汚れを拭ってやると、かけらは嬉しそうにぴかぴか輝く。

 試しにと隣に水の入れたコップを置いてやれば、なんの力か一瞬で中の水が無くなった。ビスケットを近くに寄せれば、それもすぐに消えてしまう。

 そうしてしばらくの間、不思議な客をもてなしていると、星のかけらはふわりと君の膝から浮き上がって、窓を叩き始めた。

 外に出たいのだろうと窓を開けてやると、また嬉しそうにぴかぴか光って寒空の下へ出ていったんだ。

 窓から数メートル離れたところで、星のかけらは振り返って──顔も何もないから雰囲気を感じたのみだけれど──最後に一度だけ強く光って、すごい勢いで宙へ昇って行った。

 不思議なお客だったと顔を見合わせて、互いの瞳がおかしいことに気付いたんだ。
 君の竜胆色の瞳に、小さな星が宿っているようなきらめきがあった。鏡の前に立つと、僕の瞳の中にも同じようなものが見えた。

 きっとあれは、星がくれた贈り物なんだろうね。

 だってその日は、いつも月の隣にあるはずの一等星が、ひとつ、足りなかったんだから。
 
 


(星のかけら)

1/10/2025, 10:18:48 AM