場所によっては、寒いさむい厳冬の1月から、既にスギ花粉が飛ぶそうですが、
どこぞのネット情報によれば、ゴボウをよくよく消費している某森県民のスギ花粉症発症率は、
県が内包するスギの人工林の面積と比較して、非常に、ひじょうに低いとのこと。
フラクトオリゴ糖なるものが良いそうです
(なおネット情報)
ということで今回は雪原の先へ、ゴボウ掘りに向かうスギ花粉持ちのおはなし。
最近最近の都内某所、某杉林の奥のあたりに、
領事館と呼ばれている不思議な館がありまして、
そこは「こっち」の世界とは別の世界からやってきた、厨二ふぁんたじー組織による支援拠点。
「世界多様性機構」といいます。
滅んでしまった別世界から、避難民を受け入れて、
そしてまだ生きている別の世界に密航させては定住をサポートするのが機構の仕事のひとつ。
機構は都内に領事館を建てて、日本を滅亡世界の難民たちの受け皿として整備しようと、
一生懸命、頑張って、活動しておったのでした。
領事館は、滅んだ世界から生き延びてきた密航者の、おそらく最後の拠り所。
「こっち」の世界での栄養指導や生活支援、少額ながら金銭援助も受けられます。
領事館を通して日本の文化を勉強しながら、密航者は日本人に迷惑を為さないよう気をつけつつ、
静かに、生活しておったのでした。
え?別の厨二ふぁんたじー組織「世界線管理局」が局内に整備している難民シェルター?
向こうは三食おやつ付きのレジャー完備?
ほら、そっちは機構が推しの仇ばりに敵視しておるチクショウなので。気にしない気にしない。
ところで、
その領事館の館長が、
「こっち」の世界に赴任してきて1年くらいで
まさかの重度のスギ花粉症を発症しまして。
しかも彼のビジネスネームが「スギ」なのです。
なんということでしょう(災難)
そんなスギ花粉症持ちの館長スギさん、
このたび「ゴボウを食えば花粉症予防」なる、デマだか事実だか知らぬ情報を入手しまして。
特に、強力なアレルギー症状鎮静効果を持つ不思議なゴボウ、「キツネノシズメゴボウ」が、
東京から遠く離れた、高い高い山地の雪原に、
根を張り、冬を待っているとか。
「野生としては、本当に標高の高い雪原……
そうですね、長野の山奥の稲荷神社くらいしか」
そのくらいしか、野生には自生していませんよ。
とある病院の漢方医が、コンコン、言いました。
「ま、冬の長野を軽く見てはいけません。
あそこはとても、とても寒いのです」
諦めたほうがよろしい。こやん。
その漢方医があんまりにも、オスナヨ・ゼッタイオスナヨの視線と抑揚で言うので、
別世界出身のスギ花粉症持ちスギさん、
雪積もる長野の山の稲荷神社に出発!
いざ、雪原の先へ!
スギ花粉症を予防すべく、雪のゴボウを得る旅へ!
「よし!行くぜ!」
スギ花粉症持ちの館長スギさん、別世界の高度な装置を使って、雪積もる高いたかい標高の長野へ、
高山の不思議なゴボウを掘りに、行きました。
…——結局、スギさんは雪国を甘く見ました。
「お、おお、おおお」
どうせ、北海道でも東北でもない。
車で3時間も飛ばせば届く距離しかない。
スギさんは機構の領事館の制服に、ウィンターコートという酷い軽装で、雪原の長野に到着。
「さむい」
スギさんは絶望しました。
雪原です。 一面の白です。
標高の影響で気温は氷点下。びゅうびゅう鋭利な強風が。スギさんのコートを貫通します。
「さむい」
スギさんはぽつり、言いました。
間違いなくその山には、貴重な狐の薬、キツネノシズメゴボウが野生で自生しており、
その近くに、さびれた稲荷神社があるのでした。
「さむい……!」
雪原の先へ、スギさんは踏み出そうとして、
数歩で断念して東京に緊急退避したのでした——…
「だから言ったでしょう。とても寒いと」
数日後、スギさんは例の漢方医に、ゴボウ掘りのすべてを語りました。
「あそこは本当に、ほんとうに、寒いのです」
諦めなさい。こやこや。
漢方医はため息を小さく、小さく吐きました。
雪原の先へ、ゴボウを掘りに行こうとしたスギ花粉症持ちのおはなしでした。おしまい、おしまい。
12/9/2025, 9:13:58 AM