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私一人だけお迎えが来なかった。
別にいいんだけど。いつも忙しくしてる親だったし、そんなの珍しくもなかった。
何の時だっけ。もう記憶は曖昧。小学校で修学旅行かなんかの学校行事の終わり。確か、お迎えのお願いというプリントを渡したはずだった。
あたりはもう暗くてとにかく底冷えのする寒い日で、私はぶるぶる震えて親が来るのを待っていた。歯をカチカチ鳴らして肩をすくめて──文章にすると滑稽だけど、本当に漫画の描写みたいに、ガタガタぶるぶる震えていた。
先生のどうしましょうって困惑した顔が忘れられない。もう帰ります、大丈夫なんで、そう言ってその場から去った。とにかくそこにいたくなかった。
早く帰りたいのに、家までの道のりが信じられないくらい遠かった。真っ暗だし風がもろに吹き付けてくるし、荷物も凄く重たい。涙目になるのが情けなかった。重いとか寒いとかそんな理由で泣いたら幼児みたいだ、そう思ったのを覚えている。
仕事が忙しかったのもあるけど、学校行事とか、親はそういうのが苦手で来たがらなかった。他の保護者と話しているのもほとんど見たことがない。ああいう場だと、親は私以上に居心地が悪そうだった。私も友達がいなかったし来てほしくなかった。血筋なんだと思う。親の気質をしっかりと受け継いでいたのだ。
あの帰り道は本当に染みた、寒さが。小学生だったけど、まさに骨身に染みる、ということをありありと感じていた。冷気が皮膚を突き抜けて体の組織の隅々に浸透していくみたいだった。あまりの冷たさに精神までぎゅっと縮こまって消え入りそうだった。

寒さが身に染みて


1/11/2026, 9:16:22 PM