"好きだよ"
今も呪いのように纏わりつく言葉。
何も無い空っぽの部屋で、彼女は幼い僕を抱き締めて事あるごとにそう言った。
あはは、嘘つき。
だってあなたは僕のことなんてこれっぽっちも見ていなかっただろう?
"あなたはあの人の子供だから"
彼女はそればっかりだった。
"いつかあの人が迎えに来てくれる"
最後まで、彼女の"あの人"は来なかった。
彼女の葬儀にさえ姿を見せなかった。
誰かに期待したら駄目なんだよ。
感情なんて一方通行。あちらとこちらは違う側。
好意に見返りを期待する方が間違っているんだ。
ずうっと、そう思っていたんだけどなぁ。
当時の彼女の年齢を追い越したと気付いた時、
久しぶりに墓石の前に立った。
簡単に掃除をして、花を供えて、線香に火を灯す。
ねぇ、あなたは僕を愛していましたか。
僕を憎んでいましたか。
それともそれだけの感情を持つ価値もありませんでしたか。
当然返事はなくて、ただぼんやり線香の煙が空に流れていくのを目で追っていた。
どれくらいの時間、その場にいたのかな。
迎えに来てくれた貴女の手が温かくて、いつも冷たい手をしているのは貴女の方なのに逆だなぁ、と思ったのを覚えている。
4/5/2025, 5:50:10 PM