かたいなか

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「ブランコ効果」なんて用語でも無いかとネット検索しておった物書きです。
AIは「ブランコ遊びを通じて得られる身体的・精神的な発達促進効果のこと」と回答しました。
と、いうハナシは置いといて、今回の物語のはじまりはじまり。

最近最近のおはなしです。
都内某所、某稲荷神社に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が家族で仲良く暮らしておりまして、
彼らの自宅件神社の宿坊の中庭には、
御神木よりは小さいものの、それでも上部で太い枝を持った柿の木が生えておりました。

太い枝にはキツネの家族の、末っ子子狐のために作られた——もちろん人間の子供も楽しめる、
ケヤキの板をロープで吊るしたブランコが……

「やめろ!やめろ!ブランコ、こわすな!」
「壊すのではない。新調するんだ」
「こわしてる!ブランコ、こわしてる!やめろ!」
「話を聞け子狐」

ブランコが、ある、といえばあるのですが、
何年も何年も風雨にさらされて、やんちゃな使い方をめいっぱい、長期間されましたので、
ケヤキの板も吊るすロープも、ボロボロになってしまっておりまして。

狐の家族のお母さん、ちょうど宿坊利用者に、アウトドアにそこそこ詳しい人間がおりましたので、
宿坊利用料金をタダにする代わり、末っ子子狐のために、ブランコを新調してほしいと依頼しました。

「うぅー!!うぅぅー!!」
「噛むな」
「ううぅうぅ!!」
「こ ぎ つ ね」

大きめの柿の木に吊るされたロープを切って、
今まで子狐たちを乗せておった板を外して、
すなわち、子狐の大好きなブランコを、人間の男が取り払っています。
子狐はそれが、許せません!
大事なブランコを壊されまいと暴れますが、
子狐は、破壊人間の仲間の男に、抵抗を阻止されてしまったのです。

「うぅ!うぅ!」
「子狐。聞け。あの板とロープでこのまま遊んでいると、必ず数年以内に壊れる。誰かが怪我をする」
「がううう!!」
「安全に遊び続けるためには、ブランコを、」
「うぅぅー!!」

安全に遊び続けるためには、ブランコを新しく作り直す必要がある。
コンコン子狐はそこまで言わせません。
ちいちゃいおくちを精一杯あけて、ちいちゃい牙で一生懸命、ガブーッ!
仲間の男の厚着したウィンターコートを噛みます。
牙は仲間の肌には届いておらんようです。

「こぎつね」
子狐、諦めろ。諦めるんだ。
破壊人間の仲間がそう言い終わる前に、

「よし。準備ができた」
紙やすりと、奥多摩産のヒノキの板を持って、
破壊人間が子狐の、目を見て優しく言いました。
「子狐、手伝ってくれるかな?一緒に新しいブランコに、ヤスリがけとペンキ塗りをしよう」

ほら。昔のブランコも、一緒だ。
人間が子狐に板の裏側を見せると、
少しだけキレイに整えられた先代の板、ケヤキの板が、補強材として打ち付けられておりました。

「やすり」
「そう。ヤスリがけ。新しいブランコをツルツルにするために、必要な作業だ」
「ペンキ」
「雨や虫食いに強くなる。終わったら、乾かす間、どの色のロープにするか選びましょう」
「ろーぷ……」

さあ、手伝って。このヤスリを持って。
子狐の大好きなブランコを、さっきまで破壊しておった人間が、子狐を相棒の腕から引っ剥がします。
「うー」
「何年も使えるブランコにしよう。できるかな?」
「うん」

ちょっとだけ機嫌が戻った子狐は、
新しいブランコの板にやすりをかけて、
新しいブランコの板を塗って、
そのどちらも人間に細部を仕上げてもらってから、
ペンキが乾くまでの間、ブランコロープの色を自分で、ひとつ、選びました。

「ブランコ!ブランコ!」
ペンキが乾いてロープを付けて、いちばん太くて上部な枝に2代目ブランコが吊るされる頃には、
子狐の尻尾はぶんぶん、ぶんぶん!
ブランコよろしく、左右に振れておったとさ。

2/2/2026, 4:57:17 AM