Open App


 お風呂上がりで濡れた君の髪を乾かすのは俺の役目になっている。
 「お願い」と椅子に座った君からリネンを受け取る。髪を傷付けないように吸水性の良いリネンに水分を移し、ある程度水気が抜けたところで温風を吹き付けて、櫛ですく。
 髪が乾く頃、シャンプーが香る指通りの良い髪に顔をうずめてみたい衝動に駆られたり、うっかり白いうなじに口付けてしまいそうになったりする俺と違って君の目はとろりとしている。

「眠そうな顔だね」
「乾かしてもらうの、心地がよくて…」
 うつらうつらとする君を起こそうと、うっかり、うなじに吸い付いた。
「う、わっ」
 大げさなくらいに驚いて堪らず、2回、3回と。シャンプーの香りも楽しめて一石二鳥だと気付く。

「シャンプー変えたんだ」
「そう、なんだけど…」
 びくびくと肩を震わせる可愛らしい反応に、どこまでイタズラをしたら白旗を上げるのか知りたくなって、うなじから肩のほそい線を唇で撫でる。小さな息づかいが漏れたが「止めて」と声は上がらない。

 調子に乗って『もっと知りたい』と噛み付いた。恨めしげな君と涼しげな俺。くっきりと残った歯形は独占欲と優越感の現れだった。


3/12/2023, 10:33:05 PM