「終点は始点」
小学生の頃の話だ。
習い事のため、ある街へと通っていた。
週に一度。
同時の小学三、四年生にとって、ひとりで路面電車に乗って通うことは、大冒険。
降りる停留所のいくつか先が終点で、それに憧れを抱きつつも、行ってみる勇気は当時の私には、なかった。
それ以上行けない。
そのことがほんの少しだけ怖い気がしたのだ。
そのせいだろうか。
今でも終点というものは、特別で、冒険の香りがする、憧れの場所だった。
※
今回の帰省の目的のひとつは、子供の頃に行けなかった、路面電車の端まで乗ること。
この街のシンボルは変わらないのに、その周りはどんどん変わっていく。
育った街の景色を懐かしく感じるのに、それと同時に、もうこの街の住人ではないのだと思い知らされる。
大人になって気づいた。
終点と言うけれど、それは乗っている人の視点なのだ。
別の人から見たら、ここからが始まり。
変わっていない景色と、変わり過ぎてしまった景色。
今の私が目新しく感じるものも、月日が経てば懐かしく感じるのだろう。
────終点
8/10/2024, 4:28:35 PM