小絲さなこ

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「終点は始点」



小学生の頃の話だ。
習い事のため、ある街へと通っていた。

週に一度。
同時の小学三、四年生にとって、ひとりで路面電車に乗って通うことは、大冒険。

降りる停留所のいくつか先が終点で、それに憧れを抱きつつも、行ってみる勇気は当時の私には、なかった。

それ以上行けない。
そのことがほんの少しだけ怖い気がしたのだ。

そのせいだろうか。
今でも終点というものは、特別で、冒険の香りがする、憧れの場所だった。




今回の帰省の目的のひとつは、子供の頃に行けなかった、路面電車の端まで乗ること。


この街のシンボルは変わらないのに、その周りはどんどん変わっていく。

育った街の景色を懐かしく感じるのに、それと同時に、もうこの街の住人ではないのだと思い知らされる。




大人になって気づいた。
終点と言うけれど、それは乗っている人の視点なのだ。
別の人から見たら、ここからが始まり。


変わっていない景色と、変わり過ぎてしまった景色。
今の私が目新しく感じるものも、月日が経てば懐かしく感じるのだろう。



────終点

8/10/2024, 4:28:35 PM