そこは戦場だった。空は紅く染まり、泥のような雲が、厚く、低く広がっている。
だだっ広い草原には、槍、剣、斧、弓。幾重もの武器が突き刺さり、傍に防具を纏った戦士達が、息もせずに横たわっていた。
それらが飾りに見えてしまうほど、草原の中心で派手な争いをしている者が二人いた。
一人は女性。黒い短髪に、大人びた顔。両手に握る短剣が、相手の体を傷つけようと、残像が見えてしまうほどの素早さで攻撃し続けている。
もう一人は少年。金髪を後ろに短く結んでいる。右手に銀の片手剣、左手に謎の紋様が刻まれた盾を持つ。短剣の攻撃を捌き切るのに、精一杯の様子だ。
女性の強い攻撃が加わり、少年は後退りする。
「少年、そろそろ降参したらどうだ。私達は君を受け入れる。私達"想者"を尊重し、平等に扱ってくれる君ならな」
「お断りだ!『君』ってことは、他のみんなは受け入れてくれないんだろ?」
「勿論だ。価値観の合わない者など、受け入れる意味が無いからな」
「それなら、お断りだ!!」
少年は手に持った剣で切り掛かるも、女性は冷静に避け、腹を蹴り、体を吹き飛ばす。
少年は草原に寝転がり、剣と盾は手から離れた。
「少年、何故君は生きる?お前の大切な者は既に死んだ。故郷も消え失せた。私には理解できない」
「そりゃぁ…あんたが"涙の想背者"だからだよ。涙を知っているから、その涙を流す理由…苦しみながら生きる理由が分からないってことだろ?」
「そうだ。何故、わざわざ苦しい状態を続けるんだ?涙を流した気持ちは、私に痛いほど伝わる。理解できる。なら何故」
「それはなぁ!」
少年はぐらぐらと揺れる足で、無理やり体を起こす。
既に服はボロボロで、剣を握る力も残っていない。そんな状態で、少年は言葉を続けた。
「幸せを掴みたいからだ。苦しいことがあれば、嬉しいことだってある。苦しみは、幸せを勝ち取るためのエネルギーだ」
「気持ち悪いですね」
「かもしれないな。でもな、飽和した幸せよりも、不幸せの中で掴み取った幸せの方が、すっっごく嬉しいんだ。そうして経た人生が、誰かに希望を与えられるって考えると、嬉しくてたまらない!」
少年に、想いが宿る。目に見えない。しかし確かに感じるその力は、草原に大きな風を吹かせた。
少年に闘気が宿る。リベンジを果たす、ヒーローの様に
「想いが…まさか、人間がそれを扱えるなんて…」
「驚愕をどうも!それじゃあ…もう一戦始めようか!」
これは、とある日の出来事。
とある神は、この出来事をこう記録した。
『第一次星辰戦争』と
お題『生きる意味』
想者 想いの力を持つ存在 妖怪の様なもの
想い 人間が生み出す、妬み、愛情、勇気、死。などと
いった感情のこと。
想背者 人間の想いから生まれた想者。己の想いに忠実
に生きる。想いを満たさないと、発狂してしまう
第一次星辰戦争
学校で習う歴史で、最初の方に習う時代。オーパーツの様な武器や文明が生まれた、不可思議な時代。
その頃に起きた戦争のこと。
海・空・地を司る神々が発狂し、世界が粉々になってしまった。
とある集団が立ち上がり、三柱を封印。『星辰の神』と呼ばれる神を封じた。
4/27/2026, 11:46:53 AM