かたいなか

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「手を、繋いで欲ほしい要望なのか、既に繋いでる状態を言ってるのか。どっちだろうな」
往年の「お手々繋いでお通夜に行けば」、元ネタの童謡があって、その替え歌大喜利だったのな。
某所在住物書きはスマホの画面を見ながら、今日の題目をどう書くか、相変わらず途方に暮れていた。
おそらく類語に、手を「握って」、「掴んで」等があると思われる。それらではなく、敢えて「繋いで」とする狙いはどこだろう。

物書きは頭をかき、天井を見上げて、
「『手錠で柱に』手を繋いで、とかなら、刑事ネタ行けるだろうけど、まぁ、俺の頭じゃ無理」
ひとつ変わり種を閃くも、物語を書く前に却下した。
「……そもそも『人間の手』である必要性は?」

――――――

もうすぐクリスマスとお正月。
東京も、あっちこっち年末商戦真っ只中で、液晶看板に雪が描写されてたり、いっそ本物の小さなモミの木とか店頭に飾ってあったり。
気の早い店員さんが、サンタコスでチラシ配布等々。
たまに見かけるのは、クリスマスプレゼントを親にせがんでる子供だ。
大抵はゲーム機とかスマホとかなんだろうけど、
今の時代にも、ショーケースにディスプレイされた大きなぬいぐるみを見て、「パパこれ買って」って、繋いでる手をぐいぐい引っ張る子もいるみたい。

ひとりだけ、猛烈に欲しい物があったらしくて、
親を一生懸命ゲーム屋さんまで、手を繋いで、強引に誘導してる子を見かけた。
イカかなぁ。それとも某RPGかなぁ。

「先輩、クリスマスプレゼントの思い出何かある?」
美味しいオートミール粥の専門店を見つけたから、って名目で、相変わらず日曜日も仕事の準備なんかしてる先輩をアパートから引っ張り出して、
最高気温19℃、体感気温21℃くらいの外に連れ出した正午近辺。
「そういうお前はどうなんだ?」
雪国出身の先輩には、12月の19℃は暑いくらいらしいけど、だからって引きこもってちゃ体に悪い。
「私全っ然記憶に無い。サンタさんそもそも信じてなかった気がする」
「私も子供の頃に関しては、覚えていないなぁ……」
途中先輩のアパート近所の、パンダ焼きならぬキツネ焼き、生地にお餅を使った外カリ中モチの小さいデフォルメ狐を買って、
もっちゃもっちゃ食べながら、専門店まで。

「子供の頃『に関しては』 is 何」
「お前も被害者だろう。去年のイブ。某オツボネ係長。新人いびりの被害に遭った新人が突然の退職。クリスマス当日に真っ白なままの当日期限なタスク」
「あっ。はい」
「最近やっと、次の職場に馴染めてきたそうだぞ。迷惑かけた詫びに、店舗に寄ってくれればLサイズのパンダ焼きを1個サービスすると」

「よし先輩今からちょっとそのお店行こうか」
「糖質過多。後日にしておけ」

今日くらい良いじゃん、チートデイ、チートデイ
体重増えて「先輩また低糖質ダイエットメニュー作って」、までが目に見えている。やめておけ
あーだこーだ、云々。
お餅生地のキツネ焼きをもっちゃもっちゃしながら、不服にほっぺた膨らませて、
私と先輩は、そのままオートミール粥専門店まで、別に手を繋ぐでもなく2人して歩いた。

12/10/2023, 5:17:07 AM