星乃 砂

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【街】

 [5/20 突然の別れ 
 [5/24 逃れられない
 [6/6 誰にも言えない秘密
           続編

登場人物
 桜井 華 (さくらいはな)
 高峰 桔梗
    (たかみね ききょう)

時は流れて桔梗も短大の2年生で20歳になっていた。
就職活動がうまくいかず、今だに就職先が決まっていなかった。

桜井華は夜の繁華街をパトロールしていた。
年の瀬という事で、人が溢れ返っている。
華の勤務地は住宅街で街からは少し離れている。
今日は人手が足りていない繁華街パトロールの応援である。
「高見さん、今日は何もないといいですね」
「年末、週末、繁華街、何もなかったら奇跡でしょう」
高見さんは、この繁華街にある交番勤務で私より3年早く警察官になった先輩である。
「おや、あそこに人集りがありますね」
「よし、行ってみよう」
近付いていくと、男ふたりが言い争いをして、それを女が止めようとしている声が聞こえてきた。どうやら三角関係の縺れのようだ。
野次馬を押し退けて行くと、そこには桔梗がいた。
「桔梗、どうしたんだ?」
「華さん?実は友達と年配の男の人が肩がぶつかったと言い争いになってしまって」
「事情は分かった、後はこちらで引き受けよう。」
「華さん、ちょっと待ってください。ふたりは、暴力を振るった訳ではありません。孝一君もうやめて、みんな待ってるから。おじさんも、少し当たっただけで、大人気ないと思いませんか」
ふたりは、渋々納得したようである。
桔梗はふたりに無理矢理握手をさせて、その場を収めた。
「華さん、どうもお騒がせしました」
「参ったな、私達の出る幕がなかったな、大したものだ」
「華、誰なんだ?」
「一緒に暮らしている桔梗です。
桔梗、こちらは、私の先輩の高見さんだ」
「初めまして、高峰桔梗です」
「君が、華の妹分か、なかなか大した仕切りだったね。君、警察官になる気はないかい?」
「私がですか?」
「そうだな、考えてもみなかったが、桔梗には向いているかもな」
「そうでしょうか」
「話しはこれくらいにして、私達も勤務に戻る。桔梗も気をつけて、あまり遅くならないように」
「はい、わかりました。失礼します」
警察官になるなんて、考えもしなかったな。華さんと一緒に交番勤務なんて、楽しいかも。
〈この街の安全は私達が守る〉なんて、カッコいいかも。
「おい、高峰早くこいよ、置いてくぞ」
「あー、待ってよ孝一君」

           つづく

6/12/2024, 7:27:17 AM