遠く…
私は橋の欄干に座っていた。
下に落ちればまっさかさま、一発であの世行きだ。ブラブラと足を揺らし空を見上げる。雲ひとつ無い青空でとても綺麗だった。
「えいっ」
ドン、と掛け声と共に背中を押され私は真っ逆さまに落ちていった。一体全体何がと振り返るとそこには黒い蝙蝠羽を生やした少女が一緒に落ちてきていた。
「はあ?!」
意味がわからない、そこは橋の上でニヤリと笑ってたりするシーンだろうが。だなんて余裕のある考えを浮かべていた。
「あのー……」
「なんですか」
「あ、ちゃんと見えてました? はじめまして悪魔です」
「突き落としましたよね?」
「うぐっすみませんあんなところに居たので魂いらないのかと思ってー」
悪魔と呼ぼうか。この悪魔は魂欲しさに私を突き落としてきたらしい。悪魔ってそういうものだったか?
「魂欲しいんですか?」
「えっいいんですか?!」
「いいですよ、でも死ぬ前にあなたの名前教えて下さい」
私の答えにるんるんウキウキだった悪魔は頭にハテナを浮かべてから「いいですよ」と言い唇を開く。
「悪魔番号9653418号所属ミーティアです」
「そうですか」
そこで私は背中に力を入れバサ、と純白の羽を出現させ空を飛んだ。悪魔を見下ろしこう言い放ったのだ。
「ミーティアさん直接の危害を加えての魂を得ることは禁止されています。捕縛させてもらいます」
「え、え?」
「えいっ」
パチンと指を鳴らすとミーティアは天使の輪で拘束され、そのまま落ちていくのでビュンと飛んでいき私はミーティアを抱き抱える。
「きゃあっ」
「静かにして下さい動かないで」
「はいぃ」
「天界で裁かれることになると思いますが禁固刑は免れませんよ」
「……それもいいかも」
「は?」
妙な発言にミーティアを見下ろせば頬を赤くしてこちらを見ていた。それがどういう意味を抱くのか私にはよくわからず首を傾げると天界へと飛んでいくのだった。
2/8/2025, 12:59:40 PM