〇成

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白いトレーにカランカランと乾いた音と共に色とりどりの小さな星が転がり出てくる。
いつかの遠い日、近所のお姉さんに「星を捕まえたからあげるね」と内緒話のように言われて渡されたことをふと思い出した。

横から伸びた手が黄色の星を摘んで口へと放り込むのをみて、ピンクの星を1つ手に取る。

「それ何味だった?」
「……砂糖味」

急な問いに一瞬彼女は咀嚼していた口を止めて考え込むと、多分、と付け加えながら答える。

「これも砂糖味。緑は?」
「砂糖味かなぁ」

トレーに散らばる星々を指先で探って、探し当てたお目当ての星を彼女の口元へ差し出すと、遠慮がちに咥えてカリッと小さな音を立てて咀嚼する。
今度は考える間もなく返事が返ってきた。

「水色も砂糖味だわ」
「どれも同じでしょ?」

そういう彼女の指がトレーをなぞると、カランと音を立てて色が散らばる。指の動きと金平糖の散らばる様子がやけに綺麗に見えた。

「わかんねぇだろ?どれかアタリがあるかもしれねぇじゃん?」
「アタリって言ってる時点でほとんど同じ味ってことじゃない」
「違いねぇ」

ド正論の言葉に笑って今度は白の粒を口に放り込む。舌の上で転がして金平糖特有の棘を感じたあと奥歯で齧ると、また一気に甘さが口いっぱいに広がった。

「なんか、どっかにあったよな。味も値段もド派手な金平糖の店」
「金平糖の……京都じゃ無かった?」

パッと出てくるあたり流石だと思う。
確かこの辺で、と説明されるが俺は全く分からずへぇ、と相槌を打つしかできない。
詳しい場所を知っている辺り、いつか行こうと計画を立てたことがあるのかもしれない。

「なぁ、行こうぜ今度。京都だと甘味も色々あるし、甘味巡りも出来んだろ?気になる店とかねぇの?」

一瞬の沈黙と反らされた視線が「あるけど」と言葉なく語る。

「貴方が得意じゃないでしょ、甘いもの」
「食えないわけじゃねぇし、甘いもん食ってるときの幸せそーな顔みたいから何件でも付き合うぜ?」
「言質取った!」

ニヤリと笑う顔にしまったと思わなくもないが、珍しく乗り気なのだから後悔はない。

「休み確保出来そうなとこ見つけたら、早めに宿も押さえたいね」

そう言いながらまた1つ金平糖が薄い唇へと吸い込まれていく。それを見ながら軽く身を乗り出し、その唇をそっと塞ぐ

「……甘ぇ」

唇から伝わる甘さにそう呟くと、笑いの籠った「当たり前でしょ」の声が響く。

「甘さに慣れたら、一緒に甘味食い倒れも出来るかも?」

笑いながら彼女が言うと、散らばる星を1つ拾い上げて口へと放り込む。

「もう1回、どう?」
「イタダキマス」

誘われるがままに、もう一度唇を重ねる。
唇からまたジワリと甘美な甘みが広がった。

1/8/2024, 2:21:51 PM