[たとえ間違いだったとしても]
私はこれが正しかったと、胸を張って言いたい。
「間違ってるよ。利用されてるだけだ」
彼はそう言って悲しそうな目を向けるけど、私はそんなことないと否定する。
「でもさ」
彼の指が私を差して小さく揺らすと、頬にあった小さな雫が散る。
「そんなに泣いてさ。僕を殺すの、嫌なんでしょ」
「嫌だけど。君が、そうなら……私が、って」
「そうだね。君ならそうすると思ったよ」
めんどくさそうな溜息。
「僕は魔王の依代になって、君は勇者の依代に志願した」
「……」
「あの街で平和に過ごしてれば良かったのに。なんでそんなことしたのかな」
私の選択は間違ってると、彼は言う。
そんなことない。と、首を振る。
「なんで」
「だって、私以外の誰かに。君が……殺されるなんて。嫌、だ」
「はあ。そう言うと思った」
それじゃあ。と、彼は玉座から立ち上がった。
よく知る彼の。知らない色の瞳が私を冷たく射抜いた。
「殺し合わなきゃね」
4/22/2023, 11:42:36 AM