葉月

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「澄んだ瞳」

 子ども達の瞳を見ると、きらきらと輝いていて美しい。私達は、いつから子どもの様な澄んだ瞳を失ってしまうのだろう。大人になると、子どもの様な好奇心は徐々に失われて、物の見え方が、見たまま感じたままになっていく様に感じる。
 冲方丁の『天地明察』を読んだ時、主人公の渋沢春海(1639年〜1715年)が、暦の完成に苦悩しながら、月の軌道が楕円であることに気がつく。いまならケプラーの法則があるので難しいことではないけれど、考えてみて欲しい。江戸時代である。鎖国しているので海外から入ってくる天文の知識も限られている。このくだりで、体が震えるほどの感動を覚えた。
 おそらく渋沢春海の澄んだ瞳は美しく輝いていたであろう。満月が、スーパームーンであったり、小さい月であったりするのは楕円軌道だからだ。満月を見上げる時、渋沢春海のことをふと思い出すことがある。
 何かを見るときは、見えるままでなく、心の目で捉える必要がある。そのものの中に思いもしない何かが在る時がある。より深く考えることで、真理への入り口が隠されているかもしれない。
 そして、子どもの頃の澄んだ瞳が、年齢を重ねても美しく澄んだままでいられる様に、好奇心を失わないでいて欲しい。この世界はあなたと共に無限に広がっているのだから。




7/30/2023, 11:01:40 AM