kiliu yoa

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私の母は、そよ風みたいな人だった。

月白色の髪を一本の三つ編みにして、紫翠石みたいな綺麗な目をしていて、

白磁器みたいなすべすべした温かい肌で、よく私の頭を撫でてくれた。

私には、たくさんの兄弟姉妹がいたけど、皆、一人ひとりを見てくれた。

母は仕事が忙しくて、あまり家に居なかったけど、

私たちの面倒を見る人たちが、たくさんいて、その人たちが色々してくれた。

母は、よく私たち一人ひとりを抱きしめて『世界一の宝物』と言っていた。

それを言われると、私は嬉しくて、嬉しくてたまらなかった。

たくさんの愛情を注ぎ、時には諌め、よく褒めてくれる、そんな母だった。

時は経ち、旅立つ頃に成った。

その時、気が付いた。いや、ずっと…どころか、違和感が在った。

何故、そんなに若いのだろう…と。

何故、そんなに仕事を教えてくれないのだろう…と。

何故、容姿が全く似ていないのだろう…と。

そう、母と私では…どう考えても年齢的に親子では無いこと。

そして、私は後に知ることになる。

本来なら、赤子の頃に家族と共に秘密裏に処刑されていたことを。

当時処刑人だった、まだ子どもだった母が、私を匿い、戸籍を変え、

私が成人するまで育ててくれたことを。

そして、私の実の家族を処刑した人でも、在ったことを。

もし、あなたが最低な人だったら、激怒し、恨むことが出来たのに。

もし、あなたが沢山の愛情を注いでくれなかったら……。


あなたは、私の家族を殺した人。

そして、あなたは…誰がなんと言おうと、唯一の私の母だ。

血の繋がりは、無い。

でも、あなたが私に沢山の愛を注ぎ、育ててくれたは、何一つ違わぬ事実だ。

だから、私は…あなたを…母を…赦す。

だから、私は…これまで通りに母に接する、大好きな娘として。


『─親愛なるお母さまへ
     
 本当のことを話してくれて、ありがとう。
 
 これまでも、これからも、あなたのことが大好きな娘より』
      






11/27/2023, 2:26:27 PM