こっこ

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夜明け前    Ver.2


夜明け前に、荷物をまとめた。
俺の手荷物など大したものはない。家族写真を持っていこうか迷ったが、後ろ髪をひかれるのでやめた。
寝室で眠る長女の2歳半になる、レイナとまだ6ヶ月の長男ルイ、そして俺が愛した妻の寝顔を最後に見た。
身勝手な俺を許してほしい。
到底許せるものではないけれど…。
慣れない畑の、建築関係の仕事に疲れてしまった。君との関係もギクシャクしてきた。やり直せるタイミングは何度かあった。
マイホームを建てようかと計画もしたが、君のお姉さんが何だかんだど口出ししてきた。
恵まれてる環境の妹夫婦への嫉妬だろう。
トラック運転手をしていた俺に、「うちの会社で働くか?」と結婚と同時に言われた義父の言葉に一つ返事で承諾したのは、何を隠そう俺だ。それからは、事あるごとに君の家族との繋がりにがんじがらめになってしまった。
俺は選択ミスをした。
「父の会社に入ったら苦労するよ。」君は忠告してくれたのに…。
もっと早い段階で話すべきだった。もう限界がきてる…と。
俺は君が思っているほど強くもないし、責任感にも欠ける人間だよ。
さよならも言わずに去っていく俺は卑怯ものだ。
玄関を出た。夜明け前の薄暗い夜道を駅まで歩く。
細く長い一本道。どこまでも、孤独と自由が続いてるようだ。視線を落としていた俺の行く先に、朝日が昇ろうとしていた。

9/14/2024, 2:34:41 AM