ミキミヤ

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梅雨明け間近の7月半ば。昇降口から一歩出ようとした私は、日差しがあるのに肌に雫を感じて、驚き立ち止まった。天気雨――所謂“狐の嫁入り”だ。
サァサァと降る雨が、太陽の光に照らされてキラキラと宙を踊って落ちていく。
私はしばらく呆然として、その様を見ていた。
世界にたくさんのきらめきが溢れているようで、幻想的だと思った。

すぐ近くでバッと傘を開く音がして、私はやっと我に返った。
雨の降る様ではなくて周囲の人の様子へ視界を広げれば、普通に傘を差して歩く人、鞄を傘代わりに駆け抜ける人、昇降口を出ずに雨宿りをしている人など、いろいろだった。
私は、折り畳み傘を鞄から出そうとして、やめた。そして、傘をささずに昇降口から雨の中へ駆け出した。
急ぐわけでもなければ、もちろん傘がないわけでもない。こうする意味は特にない。それでも無性に、こうしたくなった。

鞄を傘代わりにして、最寄りのバス停まで駆ける。
宙をきらめく雨が、柔らかく私の身体を叩く。
自分まできらめきの一部になった感じがして、なんだかとっても心が弾んだ。

11/7/2024, 8:25:13 AM