バーン
ピストルの音が会場に響いた。
その瞬間観客たちは1つの種目に目を向ける。
その時だけ、観客を独り占め出来るんだ。
私はその時、1番興奮する。
「はあ、」
「ため息なんかついてどうしたの?」
そう声をかけてきたのは、幼なじみでもあり私の彼氏。
「緊張するのか?」
「うん、」
「大丈夫だよ、さっきのウォーミングアップも良い調子に感じたよ、」
「うん、」
「まあ、そりゃあ緊張するわな、」
「全国はすげえよ、」
「貴方も出たじゃない、笑」
「おっ、やっと笑った!」
「えっ?」
「いや、今日お前ずっと暗い顔してたよ、」
「ほんと?」
「うん、あ〜緊張してるんだなって不安なんだろうなって手に取るように分かったよ。」
「わあ、私の全部分かっちゃうんだな〜笑」
「当たり前だろ、俺はお前の彼氏。」
「あっ、忘れてた、笑」
「おい、笑」
「おーい!そろそろ集合の時間だぞ〜!」
「はーい」
先生の声がさらに私を緊張させる。
「…」
「ねえ、」
「うん?」
振り返った途端、彼氏の腕に包まれた。
「お前なら大丈夫だから。自分を信じて俺を信じて走ることだけに集中しろ。」
「うん、ありがとう。」
「いけるか?」
「うん、あっやっぱりあと少しだけ充電させて。」
「分かった。」
私がそう言うと何も言わずに離さないでいてくれた。
「うん、もう大丈夫。」
「おう。行ってきな。」
「うん、行ってきます!」
「行ってらっしゃい!」
そして、私はスタートの位置に着いた。
この時間は1番緊張する時間でもあるが、
観客の目線を独り占めできるから嬉しい気持ちもある。
「私ならできる。」
そう小さい声で言って、目線を下に下げる。
セット
そう声が聞こえ腰をあげる。
バーン!
そして私は走り出した。
ありがとう、貴方がいてくれたから私は
走り抜くことが出来たよ、
fin
6/20/2024, 10:54:27 AM