燈火

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【もしもタイムマシンがあったなら】


ようやく期末テストが終わり、明日から夏休み。
家に帰るなりゲーム機を手に取った僕に雷が落ちた。
「まず部屋を片づける! プリントも出しなさいよ」
母さんに背後で怒鳴られ、驚きで肩が跳ね上がった。

しぶしぶ部屋に戻れば、机にプリントの山ができていた。
グッズや服も出しっぱなしで、至る所に散乱している。
ゲーム機もスマホも没収されては、暇になって仕方ない。
ため息を吐いて、周囲を見回した。

どうしてこうなった。数時間後、僕は途方に暮れていた。
片づけていたはずなのに、気づけば余計散らかっている。
空間を作ろうと引っ張り出した物を呆然と見つめた。
子供の頃の玩具の山に、見覚えのないカレンダーがある。

手に取って見れば、変な日めくりカレンダーだった。
なぜか右下に横長のディスプレイがついている。
電池が切れているらしい。時計用の単三電池を入れた。
西暦と曜日が表示され、それらは不思議なことに正しい。

「あー、寝て起きたら片づけも宿題も終わってないかな」
カレンダーを夏休みの最終日までめくりながら呟いた。
「……あるわけないか」途中でカレンダーを置く。
今日中に片づけることは諦めて、その日は終わりにした。

翌日。目を覚ますと、あのカレンダーを持っていた。
床に置いたはずなのに。僕って寝相が悪いのだろうか。
眠気を堪えて降りてきた僕を見て、母さんが息を呑んだ。
「え、なに?」僕をきつく抱きしめて嗚咽を漏らす。

奥でつけっぱなしのテレビでは、ニュースが流れていた。
『…………七月二十日に十七歳の高校生が行方不明になって一ヶ月が経ちますが、捜索は難航しています。両親の話では自室から忽然と姿を消したとのことで…………』

7/23/2023, 2:36:32 AM