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遠く… と 君の背中 です


遠く…

「もし、私が遠くに行ったらどうする?」
のんびりと過ごしていた休日。突然、キミがそんなことを言い出す。
「遠く?」
「そう、遠く」
「遠く…か」
そうなったら、僕はどうするだろう?と考えようとして考えるのを止める。
「どうしたの?」
僕が笑っているからだろう。キミは不思議そうな顔で僕を見ていた。
「ん?そんなの、考えるまでもないな。って」
「え?」
「どんなに遠くにキミが行っても、僕はどこまでもついて行くよ。だって、キミと離れるのも、いなくなるのも考えられない。僕は誰よりもキミを愛しているから」
「………」
「だから、僕から離れる。なんてバカなことを考えないでほしい」
頷くキミを、僕はギュッと抱きしめたのだった。


君の背中

「ほら、背中丸めて歩かない。シャキッとしなさいよ」
会社へ向かう途中、背中をバシッと叩かれる。
「…何すんだよ」
ジッと睨みつけると
「あくびしながらダルそうに歩いてたから、喝を入れただけだよ」
背中を叩いた人物。同期の君は、悪びれもせずニヤリと笑う。
「…マジで、女だとは思えねえ」
はーっ。っとため息をつく俺に
「褒め言葉として受け取っとくよ」
君はふふっと強気で笑った。
そんな君が、明かりも届かぬ場所で泣いているのを偶然見てしまった。
「おい、どうした?」
思わず声をかけると
「な、何でここにいるの?」
君は俺の視線から逃げるように、背中を向ける。
「たまたま通りかかっただけだ。それより、何かあったのか?」
「…何でもない」
君はそう言うけれど、聞こえる声は涙声。
「強気なのも悪くねえけど、俺の前でまで強がんなよ」
そっと背中から君を抱きしめると
「つっ…」
君は戸惑った様子を見せたものの、回した俺の腕に手を重ねている。
「………」
抱きしめた君の背中があまりにも小さくて、意識していなかった俺の心に、ほんのり火がついたのを自覚したのだった。

2/10/2025, 9:46:31 AM