朱廼戯

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地獄で待ち合わせしようよ、遅刻したっていいから。

取り立てて悪いことはしていないと思うけど、募金箱から目を逸らしたり、影口に頷いて見せたりするくらい。
広大な世界について考え出して、人1人の強さと弱さを反芻しながら、あったかい家を守るのはなんて難しいのかしら……と瞼を伏せるだけ。

ライフプラン、将来設計、目標、やりたいこと、憧れ。
ある、あるのだ。しかして叶えるために踏み出すことは、怖すぎる。
クシャッとしたレシートが溜まった財布を持って、ほどけた靴紐を特段気にせず歩く。小銭はうまく出せず、階段で躓くけれど、全部まあ仕方のない、仕様のないアタシ……と嘯いて終わりだ。
深く考えて何になる。優しくも正しくも美しくもあれない。肥大した自我ばかりが目につくのに。


でもそれが、人間らしくて良いじゃない。
生きるなら何かを奪い続けることは宿命であって、それは悲観する理由としては足りないの。
嫋やかに桜は咲いて、澄んだ水の流れは地を繋ぐ。
奪い奪われ、連鎖の中に芽吹き、枯れ、また何度でも巡り続けることの美しさ。

歯車になれない私たちは、システムにとって有害で、それでも自ら絶えることもできずに足掻いている。
肯定したい。未だ何者にもなれない、有害で障害である私を。あなたを。

綺麗は穢い。穢いは綺麗。天秤の傾きを、前から見るか後ろから見るかの差異なのだ。

ありのままの美しさを肯定して、もっと先へ駆け抜けて、穢さすら愛してみせたい。
このまま地獄に堕ちてもいいよ、怖くないって思えそうだから。

そうしたら地獄でさ、待ち合わせでもしてみようよ。私とあなた、どちらが遅刻してもお咎めなしで。

あなたの美しさを信じて、私の美しさを信じて、今はただ愛のために歩み続ける。

この果てにある愛という途方もない夢へ!遠く煌めくまぼろしへ。泥濘の中に咲く私たちが、瞬きほどの人生で、1番強い恒星の光に灼かれることを、許されたいのさ。


「夢へ!」

4/10/2025, 8:21:17 PM