未知亜

Open App

ㅤ並んで歩いていたら、ひらり。空から白い欠片が落ちてきた。あ、と思う間もなく、今度はオレンジと赤がひらりひらり。
「あ、あそこからだね」
ㅤ隣から指されて見れば、ウエディングドレスとタキシード姿の二人が照れくさそうな笑みを浮かべている。周囲の人が手にした籠から撒く花びらが、風に煽られて飛んできたのだ。
「いいね。幸せのお裾分け」
ㅤ私は地面の花びらを拾い、わざと明るく笑ってみせた。あのカップルは、いまの私たちには眩しすぎる。
ㅤ彼女は何も言わずに私の手を取って、花びらごとギュッと握り締めた。
「お裾分けしてもらわなくても——」
ㅤ少し冷たい手が、私を彼女の胸の辺りに導く。
「ちゃんとここにあるから」
「うん」
ㅤ私の手から花びらがするりと落ちて床に戻る。ひらりと花の舞う道を、私たちはまた歩きだす。


『ひらり』

3/3/2025, 3:30:19 PM