絶えず地上を照らす月。
鈴虫が鳴き、月に伸びてる月見草。
真っ白な団子をいくら積もうと、一緒に食べる人がいなけりゃ、ただただ寂しく虚しくなるだけ。
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里帰りの日。
田中 愛香(たなか あいか)は、憂鬱そうに、メイクをしていた。
愛香の実家は、大体50坪くらいの伝統的な日本の家で、全ての部屋に畳が敷いてあり、部屋と部屋は障子によって分けられていた。
縁側の外には、広い庭があり、敷地一帯はまるまる柵で覆われている。
愛香はそんな実家が大好きだった。
しかし、最近になって両親がリホームをすると言い出したのだ。
もちろん、便利にすることも、安全のためにも、大切なことだとは分かっている。
両親の安全と、愛香の思い出を天秤にかけても、愛香の不満はぬぐえなかった。
もっとも、愛香が両親になにか言うことはなかったが。
「最後になるかもなぁ」
愛香はポツリと呟いた。
見知った家が、別の家に生まれ変わる。
これはきっと、好きな何かが、別の世代には刺さらない時くらい悲しいことだ。
時代の流れを感じた。
「…よし」
準備を終え、車に乗り込む。
愛香は2時間と少しかけて実家に向かった。
両親は愛香を温かく迎え入れた。
家族三人、思い出話に花を咲かせる。
ふと、愛香の父親が思い出したように席を立ち上がった。
「今日は満月だろ?団子を用意してあるんだよ」
言って見せてきたのは、均一に並んだ真っ白な団子。
「ありがとう、あっちでやるでしょ?」
愛香は、さっそく団子を縁側に運んだ。
三人で並んで食べた団子は、ほんのり甘かった。
月は優しく輝いている。
愛香はなんだか泣きそうだった。
久しぶりに嗅いだ畳の匂いが、鼻の奥に突き刺さった。
君と見上げる月…🌙
9/15/2025, 1:21:52 AM