三日月

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たまには

 勉強会は今日も開催される。

 私がお願いして頼んだわけでもないのに、幼馴染の|雨音《あまね》くんがテスト勉強を見ると言い出したのだ。

 それには理由があって、自分で言うのも恥ずかしいのだけど、前回の中間テストが赤点だっらけだったからで、見兼ねた両親が、このままじゃ流石にヤバいと思い家庭教師をつけることにしようという話が出たのである。

 ところが丁度その時、たまたま家に雨音くんが私の忘れ物を届けに来てくれたのだけど、玄関先で家庭教師の話を聞いてしまったのだ。

「家庭教師なんて要らない!  大丈夫だってば」

 そう言ってるのを聞いてしまった雨音くんは、咄嗟に自分が勉強を見てあげると申し出たのである。

 雨音くんは私の幼馴染でもあり、両親共家族ぐるみで仲も良いため安心して任せられる相手であることは間違い無く、それに加え、成績トップの秀才である雨音くんが勉強を見てくれるとなれば両親は賛成でしか無かった。

「あ、あのさ、雨音くんは本当にそれでイイの?」

「ん?  それでイイって⋯⋯?」

「だって、そしたら、私の勉強に時間取られちゃうゆだよ、雨音くんがちっとも勉強出来ないじゃん!!」

「僕の心配は要らないよ、まだ高校生なったばっかなのに、|詩織《しおり》が学校から居なくなったら寂しいし、勉強見てあげる次いでに復習が出来るから一石二鳥って感じだしね」

「は、はぁ⋯⋯なるほどー!!  えヘヘ⋯⋯」

 そうこうしてると早速家の両親は雨音くんの両親に連絡を取っていて、事の経緯を説明するなり了承して貰ったらしい。

「良かったな、雨音くんの両親からもイイって言って貰えたぞ!!  こんな出来損ないの娘ですが、どうぞよろしくお願いします」

「ちょっとお父さん、出来損ないって⋯⋯」

「はい、任せて下さい!  責任持って勉強見ますね」

 こうして、その日から毎日勉強会が開始されることになり、何方というと、雨音くんの家での開催が多くなっていった。

「ね、ねぇ、たまには休みたいな⋯⋯」

 ダメ元で雨音くんの部屋でワークをやりながらそう言ってみる。

「⋯⋯」

 やっぱりダメかぁ⋯⋯雨音くんは暫くの間何も答えず私が解いた問題を丸つけしてくれていた。

「よし、終わったぞ!! 詩織満点じゃん、こんな短期間で解けるようになって凄いじゃないか、じゃあ、今度の休みはどっか行こうか?」

「えっ、イイの?」

「イイに決まってるじゃん、頑張ってるから、たまにはご褒美もないとな」

「わぁーい、やったぁー!!」

 こうして、次の休みになり、雨音くんとディズニーに行くことに。

 周りは家族連れやカップルばっかりで、たまたまかもしれないけど、私たちみたく友達同士で来てる感じの人はいないように見受けられる。

 すると、突然入場したばかりだというのに、人混みのシンデレラ城の前で足を止めると、突然雨音くんから告白されたのだ。

 それも、これでもかってくらいの大きな声で!!

「ずっと前から好きでした!  付き合って下さい」

 こんな場所で繰り広げられる告白激!

 誰もが振り向き足を止める。

 気づいたら私と雨音くんは沢山の人に囲まれていた。

「は、はい、宜しくお願いします」

 緊張して心臓が飛び出しそうになりながら私がそう答えると、周囲からパチパチと祝福の拍手が贈られ、その場を通りかかったキャラクターまでもが足を止め拍手をしてくれている姿が目に飛び込んできた。

 思わずその場で顔が紅葉し、更に恥ずかしくなっていく私だったけど、内心これでもかってくらいの嬉しい気持ちにもなっていた。

 その後私達は場所を移動し、漸く二人きりになったところで雨音くんはギュっと抱きしめてきて、そして耳元で「さっきは驚かしてごめん」と一言。

「嬉しかったよ!  ありがとう」

 突然のことだったけど、私も雨音くんのことが前から好きだったから本当に嬉しかったのだ。

 その後は思い切り楽しんでから帰宅した。

「えー雨音くん、また今日も勉強なの〜」

「そうだよ!  今日からまた勉強頑張ろうな」

「うん、分かった、じゃぁ、私が今度のテストで赤点回避したらまたどっか連れてってくれる?」

「うんイイよ!  じゃぁ、勉強頑張れよ」

「うん、分かった雨音くん」

 自然と嫌がらずに勉強モードに突入する私。

 今日も私は雨音くんと一緒に勉強を頑張ります!   

 えヘヘ!
 



3/5/2023, 2:15:12 PM