頁。

Open App

『最後のみんなの笑顔がステキ! ドキドキもハラハラもあってとても面白かったです。連載お疲れ様でした』

 コメント欄を開いていちばんに目に入った文章に首を傾げる。
 そういう評価を受けるようなものだったかな、これ。
 画力も、ストーリーも、キャラクターもなんだかイマイチで。すこし検索すればもっとずっと素晴らしい作品がゴロゴロと転がっているだろうこのご時世に、どうしてこんな、駄作といって差し支えないような漫画もどきに称賛の声が送られるのか。
 画面をスワイプしていく。称賛は消えない。お疲れ様でした、面白かったなど、やはり明るいコメントのほうが人気のようだ。
 とあるコメントで、ふと、手が止まった。

『俺、この作品、正直好きじゃなかったんだよね』

 そりゃそうだ。その言葉を待っていたんだ。

『初めてみた時、絵もストーリーも変にかぶれてる感じがして、好きじゃないなあって。どうして自分がこれを見てるのか分からなくなった』

 でも、とコメントは続く。
 私はおもわず目を見開いた。

『でも、なんでか読むのを止めようとは思わなくって。んで様子を見てたんだけど、読み進めれば進めるほど伏線が回収されてくし、コマ割りとかすごい見易くなってって。んで、結局ここまで読んじゃった。今では読みきれてよかったなって思うよ。
 何様だよって感じになっちゃったけど、先生、連載お疲れ様でした。ここまで逃げずに描き上げてくれてありがとう。この作品と、あなたと出会えて本当によかった』

〝次回作も楽しみにしています〟
 その一文で締め括られたそのコメントは、下から二番目のところにあった。
 大粒の涙がこぼれる。こんなにもあたたかい言葉をかけられたのは初めてで、胸の辺りがひどく苦しくて、それ以上にぽかぽかと熱を帯びている。
 スマホを胸に抱いて、声に出してみた。

「こちらこそ、ありがとう」

 また彼らと出会うために頑張ろう。
 さあ、次はどんな話にしようかな。


▶ハッピーエンド #68

3/29/2024, 11:19:23 AM