突然の大雨に鞄から出そうとした折り畳み傘をしまった。
昇降口で雨宿りしている君を見つけたから。
「すごい雨だね」
「ね。傘持ってくれば良かった」
何気ない会話なのに大きく響く鼓動。
雨の音がそれをかき消してくれる。
「通り雨かな」
「この感じだときっとそうだよね」
本当は天気の話なんてどうだっていいんだ。
僕が話したいことは、ずっと前からひとつだけ。
「今日の小テストどうだった?」
「全然だめ」
「おれも」
臆病な僕とふふっと柔らかく笑う君。
その笑顔は雲間から差し込んだ光みたいだ。
「雨、早く止むといいね」
気持ちとは裏腹な言葉を吐くと、君は首を横に振った。
「……私はまだ止んでほしくないかも」
そう言って照れた笑顔を見せた君に、さっきと同じように「おれも」と返事するだけで精一杯だった。
▷ 天気の話なんてどうだっていいんだ。僕が話したいことは、
6/1/2023, 9:21:45 AM