「麦わら帽子」「君の奏でる音楽」(8/11、8/12)
入力内容が消えてしまったのでまとめて投稿しちゃうよ!!!
我ながら何度これを繰り返しているのやら!!!
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「麦わら帽子」
これは大分前の帰宅途中に見かけた可愛らしい思い出です。
私は電車の先頭車両に乗っていました。
あと少しで降りる駅だ、なんて思いながら車内をボーっとみていたのです。
少しすると、大きな麦わら帽子をかぶった小さな男の子を二人連れたお母さんが乗り込んできました。お母さんも大変だなあなんて思いつつ見つめていると、男の子たちは運転席が気になっているようで、ガラス越しに見つめ始めます。
お兄ちゃんも弟も小さい子だったので、運転席がちゃんと見えていたのかどうかはわかりませんが、楽しそうでありつつもおとなしくてよい子たちでした。
そういえば、この駅からすぐそばにあるトンネルを通るときには、いつも運転手さんが運転席のカーテンを閉めていることを思い出しました。
今は小さい子たちが見ているみたいだけれどどうするんだろう?いつも通りカーテンを閉めるのかな?そう思って見ていると、カーテンを閉めようとしたとき、小さな男の子たちが運転席にある扉のガラスにくっついていることに気付いたようです。
恐る恐る見守っていると、その子たちが運転席を見たいことがわかったのか、運転手さんはカーテンを開けっ放しにして運転を続けていました。
その様子を見たとき、私は運転手さんの静かな優しさと子供たちの純粋に楽しむ表情がとても素敵で幸せな気分になりました。
私もその親子も同じ駅で降りて行ったのですが、そのあとすぐに見失ってしまいました。
運転手さんも、小さな兄弟も覚えているかどうかはわかりませんが、彼らにとっていい思い出になっていたらいいなぁ、なんて思いながら家に帰りました。
麦わら帽子を見ると思い出す、小さくて温かい思い出の話でした。
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「君の奏でる音楽」
時々ピアノ教室で見かける君。
全然知らないけど、ちょっと気になってた。
この子はどんな演奏をするんだろう。
僕より上手いのかな。どんな曲が好きなんだろう。
気になることはいろいろある。
ある年の夏。久しぶりにピアノの発表会が開かれることがわかった。
同じ教室に通っているから、多分あの子も参加するんだろう。
何かきっかけがあれば声をかけられるだろうか。
いや、下心なんてこれっぽっちもないつもり、だけど。
変に思われないかな?
……いや、いいか。そんなことを気にしたって仕方ない。
とにかく今はたくさん練習しないと。
そうしているうちに、もう発表会当日を迎えていた。
当日のスケジュールと曲目を見る。僕は最後の方に出番が回ってくるみたいだ。
……今更緊張してきた。
たとえ緊張したとしても、僕は僕の演奏をするだけだ。
やれることは全部やったんだから、その成果を発表するんだ。
そう思って僕は舞台に立つ。
曲はシベリウスの「樅の木」。
そびえ立つもみの木、そこから漏れる木漏れ日、静かな森。
繊細でありながらも自然の強さを僕はその曲の中で表現した。
最後の音が響いて消えて、静寂ののちに拍手が聴こえる。
きっと僕はうまく弾けた。そう信じている。
そのすぐ後、ずっと気になっていた彼女の出番が来た。
曲はグリンカ・バラキレフの「ひばり」。
春のうららかな朝の日の光を浴びながら、高らかに鳴く小鳥。
森の木の間を羽ばたくひばりが見えるような、透明感のある演奏だった。
僕は思わず息をのんだ。
同じ楽器を使っているはずなのに、どうしてこれだけの違いが出るのだろう。
彼女とは何が違うんだ?
経験?感性?それとも手の大きさ、だろうか……?
美しい演奏に圧倒されて、僕は言葉を発することさえできなかった。
呆然としていると、彼女が声をかけてきた。
「君の演奏、かっこよかったよ!」
「……あなたには及ばないですよ。」
「え~、そんなこと言わないでよ!もみの木の力強さも、優しさも感じられて、私は君のあの演奏、とっても好きだよ?」
「そう、ですか?……よかったです。」
「君、同じピアノ教室の子だよね?私のすぐ後にレッスン受けてる子。」
「あ、はい。そうですね。」
「いつもすれ違うたびに、この子はどんな演奏するんだろうな~、ってずっと気になってたんだ。そしたら、すっごいいい演奏するからなんか後悔しちゃったよ。」
「え、何でですか?」
「こっそり残ってレッスンの音聞いてればよかったなー、って。あと、もうちょっと早く声掛けとけばよかったなー、とか。」
「……そうなんですね。なんか、ありがとうございます。」
「僕も、あなたの演奏がすごく好きです。まるで本物のひばりを見ているような、春の温かさと綺麗な朝日が見えるような……。あんまり言葉にするのは得意じゃないんですが、僕はあなたの演奏にすごく惹かれました。」
「あの、僕からお願いするのも変なんですが……。これからも、あなたの演奏が聴きたいです。僕もたくさん練習するので、もっといろんな曲を聞かせてください。」
「……。ありがとう。私ね、自分の演奏にあんまり自信がなかったんだ。いつもあれもこれもダメって言われて、楽譜通りに弾かなきゃって焦って。自分らしさを出すのが怖かったんだ。」
「でも、君にこうやって褒めてもらえて、すごくうれしかった。最初は純粋に好きで始めたはずなのに、だんだん自信がなくなってきて、これを最後にもうやめようかな、って思ってたんだ。」
「だけど、私らしく弾いたっていいんだよね?」
「僕はそう思います。だって、僕はあなたの演奏が好きで……。」
「え?!!私告白されてる?!!」
「あ!!!え……そう、かもしれません……。」
「かわい~!」
「それじゃ、せっかくだから連絡先でも交換しようか!」
「え、あ、ありがとうございます?」
まさか発表会が新たな始まりを生むなんて思ってもいなかった。
……でも、君の奏でる音楽をこれからもそばで聞いていられるとしたら。
これ以上幸せなことはない。
8/12/2024, 7:05:28 PM