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 教室に来てから最初にするのは、和也の席を見ること。
 別にアイツのことが、好きだからという訳じゃない。
 なぜならアイツの隣が私の席だから。
 そして自分の席ではなくあいつを探すのは、髪が少し派手なので目印にちょうどいいから。
 だから何も変なこともない自然な事。
 アイツの事を見つけて少し体が熱くなるのは、自分の席を見つけられた安心感からなのだ。

 彼の頭を目印にして、自分の席に向かう途中、不意にアイツと目が合う。
 驚いて心臓が跳ね上がった私の事なんて気付かず、『おはよう』と挨拶してくる。
 私は極めて冷静に『おはよう』と返す。
 すこし、声が変だったかもしれないけれど、仕方がない。
 だって私は朝が弱い。
 アイツも知ってる事で、変に思われることはない
 
 そして始まる朝の会話。
 毎朝の恒例行事。
 和也とは、趣味が合うので話が楽しいのだ。
 一日で最も楽しい時間。
 でも間違いが起こることはない
 私達はただの友人同士で、これからもずっと変わることはない。

 アイツと話すようになったのは最近のこと
 先月の席替えの時、席が隣同士になったのだ。
 今まで接点が無く、名前すら怪しいクラスメイトだったけど、話してみると以外に話は弾んだ。
 共通の趣味から、1㎜も理解していない物理の話まで。
 不思議と話しやすく、何を話しても盛り上がった。
 それ以来、機会があればよく話している。
 あまりに気持ちよく話せるので、ふとした時にアイツを探すようになった。

 でもアイツは異性として好きじゃないし、自分のタイプからもかけ離れている。
 友人としては好ましく思っている。
 仲のいい友人、それだけ。
 それにアイツには彼女がいる。
 仮に私がアイツの事が好きでも迷惑なだけ。
 だから、私のこの感情は『好き』じゃないのだ。

 教室に来てから最初にするのは、和也の席を見ること。
 アイツの事なんか好きじゃないのに、気づけばアイツのことを探してる。
 でも勘違いしちゃだめだ。
 だってこれは叶わない恋なんだから。

3/26/2024, 10:12:06 AM