エリィ

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「日差しが暖かいな」
今日は風があまり吹かない。ここ2、3日冷たく強い風が吹いていたけど。今日は朝から晴れで、気温も上がるとか。いつもより暖かいとは言え、やはり手は冷える。
俺はダウンジャケットのポケットに手を突っ込んで、カイロを揉みながら近所のコンビニに向かっていた。
「でも寒い」
ブルリと身を震わせ、背中を丸める。
「全く……自分で行けよ」
俺はコンビニまでの道をブツブツと愚痴りながら歩いていった。

こうなったそもそもの流れだが、
暖房の効いた部屋で兄と俺は、買い出しをしようと言う話になった。
「はー。こういうときはあれが欲しいよな」
こたつで丸まって、テーブルに顎を乗せていた俺は思わずつぶやいていた。
「そうだな」
兄も同感だったらしい。
「兄さんもか。じゃあ兄さん買い出しに行って」
俺が頼んだら速攻で断られた。
「何を言ってるんだ。先に言い出したお前が買ってくればいい話だろう」
しばらく俺たちはこたつの中から互いを追い出そうとしていたが、なかなか決着がつかない。
「じゃあ勝負だ、勝ったほうが負けた方の言うことを聞くということで」
そう自分の方から言い出して兄に拳で挑み、平手を出されて負けてしまった俺の自業自得である。

「またこの道帰るのか〜。寒い」
買い物を済ませた俺は、手に目的のものを下げて家に帰る。
冬の晴れた空に、小さな雲がひとつ浮かんでいた。


「やはり暖かいところで食べるアイスは美味い」
兄は少し笑みを浮かべながら、バニラをすくっている。
俺はイチゴ味をスプーンですくって口に入れた。暖かい部屋の中で、口に広がる冷たさが気持ちいい。高級カップアイスは実に美味しかった。

おしまい。




おまけ:
冬晴れに 木枯らし休んで 雲一つ

1/6/2025, 4:51:35 AM