ぷるりとした露を、紫陽花の葉の上から滑り落としてみたり。
あるいは、道に落ちたカラカラの落ち葉を勢いよくふ(つぶしてみたり。
そういう、どうしてもやりたい、説明のつかない破壊衝動は、きっと皆持っている。
普段は、その矛先が人間でないからと見て見ぬふりをして、あまつさえ外でそれらの欲求を満たしている。
そんなのは許されるのに、何故僕は許されないのだ。
自分一人に向かって集中するカメラのフラッシュと、軽蔑と好奇心を孕んだ人々の不躾な視線が、僕を真正面から貫いていた。
昔から、破壊衝動の抑えられない子供だった。
友達の作ったブロック製の城や砂の山なんかを、衝動に急かされるままに壊しては友達を失ってきた。
端から見れば、僕は最低最悪の人間なのだろう。
人様のものを壊して、それで喜んでいるのだから。
それはいい。だって、事実だ。
僕が他人のものを無許可に破壊したのも、それが楽しかったのも、全部事実だ。
僕が気に食わないのはそこじゃない。
僕が嫌なのは、清廉潔白を装って僕を叱る、正義ヅラした肉塊たちの存在だった。
皆、本質は僕と同じくせに。
僕なんかより、ずっと巧妙に、ずっと気味の悪い衝動を隠し持っているくせに。
僕に向いたフラッシュは、君たちの抱える衝動の化身だ。
無責任に、他人の落ちぶれる様を見たい。
めちゃくちゃになった他人の人生を、あくまで他人として消費したい。
皆、そう思っている。
モノを壊して喜ぶ僕と、ヒトを壊して喜ぶ君たち。
どうして僕がそんなに責められなくてはならない。君たちの秘めるその衝動のほうが、ずっとずっと醜くて汚いじゃないか。
幼稚な僕は、その不条理と苛立ちを堪えきれなかった。
僕の破壊衝動はその日、初めて人間に向けてふるわれた。
テーマ:不条理
3/19/2026, 8:50:44 AM