─空模様─
ぽつぽつと雨が降る。
けれど、僕の心は躍っていた。
だって、今日は
向日葵くんに会いに行く日だから。
向日葵くんはちょっと遠くの街に住んでいる
10歳年下の男の子。
母さんの友人の子供で、
最初こそツンツンしていたけれど、
最近は僕に懐いてくれていて、弟みたいな存在だ。
履き慣れた靴を履いて外に出る。
僕が「いってきます」と言うと、「いってらっしゃい」と返ってくる。
『ボクも連れていって』
そんな声が聞こえた気がして、振り返る。
そこには青色の小さな長靴が居た。
僕が向日葵くんぐらいの時に履いていたものだ。
今は亡きじいちゃんが、一生懸命選んでくれた。
当時は凄く気に入って、何処に行くにもこれを履いていた。
「懐かしいな」
僕にはもう小さい長靴。
その存在に気がついたのに、
置いていくのは可哀想だ。
大切に使っていたから、
使い古したようには見えないほど綺麗な長靴。
ああ、そういえば。あの子は青色が好きだったけ。
そう思いついてからは早かった。
綺麗に包装したそれを両手でしっかりと抱える。
「今までありがとう」
先程まで雨が降っていたはずの空は晴れ、
太陽がにっこりと僕達を見守っていた。
8/19/2024, 4:33:50 PM