【雪】
はらり。視界の端に舞い散る何かが映り込んで、半ば条件反射のように窓の外を見やる。勢いよく降り始めた雪が、無機質な景色を真っ白に塗り替えようとしているところだった。
この街に越してきてから、もう何度目の雪だろう。
もう片手では足りないことは確かで、けれど年々指折り数えていくのが辛くて、正確な回数を記憶するのもやめてしまった。ここで迎える冬を数えるのは、幼い頃育った故郷と、大好きだった幼馴染と離れてから経ってしまった年数を数えることと同義だったから。
目を閉じる。懐かしいあの場所で見た雪が、雪を見てはしゃぐ彼の姿が、今でも鮮明に脳裏に焼きついている。
『ね!見て!積もり始めたよ!』
心の底から嬉しくてたまらないというふうに、記憶の中の彼が笑う。思わず目を開いた。眼前の街が、少しずつ雪景色へと変わっていく。
「ほんとだね」
ぽつりと小さく、呟いた。彼に釣られて微笑んで、けれど視界はぼやりと滲んで。きっと誰にも見せられないような情けない顔をしながら、私は降りしきる雪を眺め続けた。
1/8/2026, 12:16:11 AM