びいどろ

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#ハッピーエンド

物語は、いつも正しく終わる。
選ばれた者同士が結ばれて、それが幸福だと定義される。

では、選ばれなかったものはどうなる。
伸ばした手が届かなかった瞬間ごと、切り捨てられる。
最初から存在しなかったものとして、都合よく消される。

ハッピーエンドとは、そういう構造だ。

だから。
物語の中心にいる貴方は、幸福でなければならない。

知性も、容姿も、何もかもが整っている。
綺麗で、正しくて、
曇りのない感情で愛されるのが、あまりにも似合いすぎている。

――だからこそ。

そんな貴方の隣に、
この歪で、濁って、形すら定まらない感情が並ぶことは許されない。

理解している。
理解しているはずなのに。

それでも、消えない。

排除されるべきだと知りながら、
触れてはいけないと分かりながら、
なお、手を伸ばしてしまう衝動がある。

壊してしまえばいいと、思ってしまう。

その完璧な物語ごと、
その正しく整った結末ごと、
全部、ぐちゃぐちゃにしてしまえば。

選ばれなかったものも、
最初からそこに在ったと証明できる気がしてしまう。

――それでも。

最後に残るのは、やはり願いだ。

どうしようもなく歪んだまま、
それでもなお、貴方の幸福を望んでいる。

壊したいと願うこの感情と、
壊さずにいさせたいという願いが、同じ形で共存している。

そのどちらもが本物だから、
どちらも捨てられない。

だからきっと。

この物語は最後まで、
綺麗には終わらない。

3/29/2026, 10:55:15 AM