いちさん(えいのーと)

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手紙の行方



心で思うことを溜めるのは毒だ。
ならば吐き出して仕舞えば良い。

人にぶつければその人が負担になるかもしれない。
穴に叫べばどこかにこだまして広がるかもしれない。
だから人は紙に吐き出すという手段を見つけたのだ。
紙に吐き出して、三日寝かせて後から読み返す。
そうすると何故?と思うことが沢山あるし、
あの時こんな気持ちだったのか、と振り返ることができる。

そんなアドバイスを誰からもらったかは
思い出せないけれど、
自分の気持ちを整理したい時、
手紙という形で紙に書く方法を思いついた。

宛先は誰かだったり自分だったり、
空だったり、花壇の花だったりする。


今回の手紙の相手は大好きな友達だ。


最近新しい友達ができて、
その子と話してる時間が増えた。
話してる内容は自分が入り込めないもので、
取り残されたようで寂しい。

あなたが話してる相手を睨んでしまうこともあるリー
相手が悪いわけじゃないってわかってる。
でも寂しい。


友達は他にも沢山いるけど、
あなたといる時が一番楽しい。
笑顔を見てるとこころが明るくなる。

あなたが他の友達を作るのを邪魔する気なんてない。
でも寂しい。

わたしはあなたが思ってるより幼稚で子供なんだ。
わたし以外の友達を作らないで!って
心の中で駄々を捏ねてる。

それが悪いことだってわかってる。
でも寂しい。

すごく寂しい。


ずっと友達を作るのが怖かった。
あなたのおかげで勇気が持てた。
あなたはわたしの一番。
あなたの一番もわたしだったら嬉しかったけど、
それを決めるのはあなただから。


でもときどき叫んでしまいそうになる。

わたしのいちばんになって!私とだけ遊んで!って。

こんなことあなたに言うことはないよ。
紙に書いておしまいにするの。

明日はいつもの私で挨拶するから、
おはようって返事してね。






重い、重いわ…。



3日どころか10日寝かせて読み返した手紙の
重さに我ながら引いてしまう。
昼前のクラス移動の時、
別のことおしゃべりしながら出て行った友人を見て、
手紙を読み返すことを思いついた。


時々だ。時々自分は湿度100パーセントの
妖怪濡れ女になってしまう。


幸いなことにコレを学校で外に出したら
学校生活が終わるとわかってるので、
家で兄に話を聞いてもらったり、
運動をして考えないようにしたり、
お菓子を作って甘いもののことを考えたりして
出来るだけ濡れ女に変わらないようにしているが、
それでもダメな時は紙に書いている。

後で読み返して考え直すためだが、
これは友達にぶつけて感情じゃないというのがわかる。

ふう、自分なんでこう根暗なんやろ。
相手は自分のことを雑に扱ってるわけじゃない。
声をかけたらいつでも笑ってくれるし、
相手からも話しかけてくれる。
部活が違うから一緒に帰ることは少ないけど、
お昼はいつも一緒だ。
手紙もSNSもやりとりしてる。


ただ、友達がその世界と違う世界を持ち始めただけだ。


その分、自分と過ごす時間が減った。

それをとやかくいうのは心が狭すぎる。
手紙を読み直して、自分の重さを再確認する。


あかん、あかんわ。反省しよ。
ここみちゃんはうちのものやないし、
うちとだけ遊んでで、ここみちゃんが
いつの間にかぼっちになる方が嫌やわ。


手紙を封筒にしまい、頭を振って教室に戻る。


ポケットに入れたつもりで床に落としたことには
家に帰るまで気づかなかった。




















2/18/2025, 3:08:17 PM