束の間の休息
プツ……とスピーカーから響く音が途切れた。
声を出すのに疲れたのだろうか。
トントンと軽く頭を叩いてやるとザザッと音がなった。
「……アの、叩クの、は、ヤめてもらえマすか?」
掠れた機械の音が再び聞こえ始める。
「ボクだって休みたイんですよ。束の間のアレです。」
少し苛立った様子だ。
「アなたにいつもつきあってあげてるボクを労ってくださいよ、ほんとうに。」
だんだんと滑らかになっている音は私を責め立てようとする。
「やっぱりあなたって……その、あー……アレ、アレですよ。」
語彙力のないカセットからは私を罵倒するふさわしい言葉は見当たらなかったようだ。珍しい。
「……とにかくもうボクは寝ます。起こさないでください。じゃ。」
そう言うとカセットの電源が切れた。試しに歌わせてみようとどこかのボタンを押す。
「…………チッ」
舌打ちが聞こえた。が、歌は聞こえなかった。
10/8/2024, 10:48:27 PM