じわり、と汗が頬を伝う感覚はあれどこの身は指一本たりとも動かず、芯から冷えていく心地を味わわされる。
海の底にいるような、冷たく暗いこの部屋には暖かくなるものが確かにあるのに、手を伸ばすことも出来ずただひたすらこの目は闇を見つめる。
「 」
微かに唇は動いたのだろうか、それすら今の自分にはわからず、ただ空気を吐き出す息だけが部屋の中に響く。
寒い、冷たい、お腹がすいた、……寂しい。
物語のように都合良く扉を開く存在がいるわけでもなく、ただ今日も息をする肉の塊に成り下がるのであった。
お題 海の底
1/20/2023, 6:24:54 PM