〜飛べない翼〜
「よいしょ… うひぇっ! いててて…」
「もえみちゃん!大丈夫??」
「うぅー」
「おーい、大丈夫か?何か骨折でもしたの?」
「ううん… 大丈夫。」
「本当に?」
「うん、大丈夫よ。ちょっとお尻を打っただけ。ほら、立てるよ。」
「出血は?」
「ないよ」
「ちゃんと確認した方がいいよ。内出血とか。」
「なんて?声がちっちゃくてここから聞こえないよ」
「内出血もないか、と聞いてる。」
「多分大丈夫。そんなに高くないし。高円寺君も降りていいよ。」
「…かすり傷とか?」
「え?なんて?」
「かすり傷があれば言ってね。消毒液あるから投げようか?ほら、山奥だからバイキンとか多量発生してるだろう。気をつけないと。」
「いいって。それより早く降りてきて。日が暮れちゃうよ。」
「…」
「何?」
「もえみちゃんはものすごく運が良かったよ。いきなり飛んでいってびっくりしたよ。無謀すぎる!」
「ここしか帰れる経路がないって、何回も確認したじゃん!早く高円寺君も降りて。2メートルしかないし、運動不足の私でも平気だったし。」
「めっちゃ痛がってたじゃないか」
「ちょっとだけだよ!バランスを崩して尻餅をついただけ。ねえ、夜になったら本当に遭難しちゃうよ!」
「…」
「ひょっとしたら…」
「…」
「…高円寺君、2メートル飛ぶのが怖いの?」
「…」
「あきれた。一人で帰るわ。」
「えっ!」
その夜22時30分頃に、中原萌美(17歳)の通報により、救助隊が遭難者・高円寺翼(17歳)を発見、梯子を用いて無事救助しました。
11/12/2022, 3:35:44 AM